東北大学、岡山大学、南山大学、国立歴史民俗博物館の研究チームは6月15日、弥生時代、北部九州で広くみられる甕棺(かめかん)と呼ばれる墓の数から推定された人口圧と、骨に残された傷から推定された争いの頻度の関係を、統計的に考察した結果、同時代の争いの原因について、人口圧が重要な一つの要因であると解明したと発表した。人口圧とは、生活を支える経済活動に対して、人口が過剰となることで人々が感じるストレス。
研究チームは、弥生時代中期(紀元前350~紀元30年)に北九州で起こった争いの原因を考察。人口圧が高くなれば争いの頻度が増加するという傾向がみられた。このことから人口圧が争いを増加させる要因であったと考えられると結論付けた。
南海トラフ地震 次は前回発生時から300年余経過の宝永型?
政府・地震調査委員会委員で産業技術総合研究所名誉リサーチャーの岡村行信氏が5月31日、日本地球惑星科学連合大会で南海トラフ巨大地震を巡り、興味深い発表を行った。この中で、岡村氏は、次に起こる南海トラフ巨大地震は江戸時代の1707年に起きた宝永地震と同じタイプになる可能性があるとの研究結果を発表した。
宝永地震は、紀伊半島付近で震源断層の破壊が始まり、静岡-高知沖の広範囲が震源域となった。その規模は史上最大のマグニチュード(M)8.6とされる超巨大地震。岡村氏は過去の南海トラフ巨大地震について宝永地震と幕末の1854年に起きた安政地震(東海、南海地震)の2タイプがあると指摘。宝永型は紀伊半島の地下、安政型は静岡、長野県境にあたる赤石山脈付近の地下からそれぞれ破壊が始まるとしている。
684年間以降、この2タイプの巨大地震は、宝永型が887年の仁和地震、1361年の正平地震、1707年の宝永地震、安政型が684年の白鳳地震、1096年の永長地震、1498年の明応地震、1854年の安政地震と、ほぼ交互に発生してきており、痕跡を残した津波により宝永型か安政型かを分類できる可能性があるとしている。そのうえで、2タイプがどの程度の間隔で起きているかを分析。前回の1707年から300年以上(314年)経過している宝永型になる可能性があるとした。果たして?
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縄文時代のクルミ詰まったかごなど保存処理 福島・鷺内遺跡
福島県南相馬市の鷺内(さぎうち)遺跡で見つかった縄文時代晩期(約3,000年前)の、クルミが大量に詰まった編みかごなど出土品4点の保存処理が終わった。6月13日まで南相馬市博物館で展示されている。
鷺内遺跡は縄文時代晩期と古墳~平安時代の遺跡。2017~2018年の調査で、縄文期の貯蔵穴とみられる土坑からかごやざるなど計17点が出土した。湧き水に浸かったお陰で腐らずに残ったものに、今回保存処理が施された。中でもクルミが詰まった編みかごは完全な形で見つかった。
クルミの編みかごは底面が縦、横とも約20cm、高さ約35cm.竹笹塁で編み上げられ、推定で数百個のオニクルミが詰まっている。3.6~4.2cmと大ぶり粒が揃っている。クルミが詰まったかごがこれほど完全な形で出土するのは、全国でも例がないという。
縄文遺跡群 世界遺産へ 北海道・北東北3県 イコモスが勧告
文化庁は5月26日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産として日本が推薦していた「北海道・北東北の縄文遺跡群」(北海道と青森・岩手・秋田の3県)について、ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」(イコモス)が、「登録が妥当」とユネスコに勧告したと発表した。
7月16~31日にオンラインで開催されるユネスコ世界遺産委員会で登録が決定される見通し。正式に決まれば、日本国内の世界文化遺産は20件目となる。
縄文遺跡群は、縄文時代を代表する大規模集落跡「三内(さんない)丸山遺跡」(青森県)、大規模なストーンサークルとして知られる「大湯環状列石」(秋田県鹿角市)、地面に竪穴を掘り、その土を周囲に積み上げた「キウス周堤墓(しゅうていぼ)群」(北海道千歳市)-など17遺跡からなる。約1万年間続いた縄文時代に、狩猟、採集、漁労による定住生活が確立し、発展していった過程を伝えている。
イコモスは「先史時代における農耕を伴わない定住社会、複雑な精神文化を示している」と評価している。
「リュウグウ」に惑星誕生時の物質存在 立教大チームが分析
立教大などの研究チームは5月25日、英科学誌「ネイチャー・アストロノミー」(電子版)に、探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」に惑星が生まれたころの状態が残っているとみられる物質が存在すると発表した。
はやぶさ2が2018年~2019年にリュウグウを探査した際、中間赤外カメラなどで観測したデータを分析した。その結果、直径9mのクレーターの中心に、周囲より高温の部分があった。クレーター中心部には水に浮くほど密度が小さな、ふわふわの物質があることが分かった。別の直径20mのクレーターにも、さらに密度が小さな物質が確認された。
太陽系で最も初期の姿に近い天体と考えられている彗星の密度に近く、熱や衝突の影響をほとんど受けていない微惑星の状態が残る物質と考えられるという。
はやぶさ2が持ち帰った物質にも含まれている可能性が高く、太陽系がどのようにつくられたのかという謎の解明につながるとみられる。