作家の三島由紀夫(1925〜1970年)が石原慎太郎(1932〜2022年)に宛てた書簡計6通が石原の遺品から見つかった。うち1通は三島が「楯の会」の主宰者として自衛隊市ヶ谷駐屯地(所在地:東京都新宿区)で自決する3年前に送ったもので、石原の政界進出(参議院全国区)への決断を促す要因となった。石原は後年、著作でこの書簡の存在に触れていたが、実物が確認されたのは初めて。
三島由紀夫の研究で知られる井上隆史・白百合女子大学教授は「時代や社会を向こうに回して、原稿用紙のマスを埋めていくという創作姿勢において、両者は共通していた。やがて、政治や天皇を巡り対立するが、それは接近した同極の磁石が激しく反発し合うのに似た現象で、書簡はその経緯をうかがわせる重要な資料だ」と語る。