元興寺文化財研究所は5月20日、奈良市疋田町の菅原遺跡で、8世紀半ばの類例のない円形建物と大規模な回廊の跡を確認したと発表した。ここは東大寺大仏の造立を指揮した奈良時代の高僧、行基(668~749年)ゆかりの寺「長岡院」があったとされる地。同研究所は行基をしのぶ供養堂の遺構で、後世の仏塔建築「多宝塔」の原形の可能性が高いとみている。
遺跡は平城宮跡の西方、標高106mの丘陵上にあり、宅地開発に伴って2020年10月~2021年1月に約1,960㎡を調査。柱穴(直径約21cm)15基が直径約14.5mの円状に並び、その内側にも石を抜き取った跡が円状に確認された。北西側では柱穴の列も見つかり、約40m四方の回廊などが円形建物の周囲を巡っていたとみられる。