谷崎、林芙美子らの直筆短歌 中国文学者と交流の証
谷崎潤一郎や林芙美子らが中国の文学者に宛てた未公開のはがきや手紙などが見つかった。専門家は、日中間で戦時下の当時の時代背景を考え合わせると、こうした文学者同士の交流は奇跡に近く、貴重な史料だとしている。
新たに見つかったのは、谷崎潤一郎、林芙美子のほか、志賀直哉、武者小路実篤など日本の近代文学作家が記したはがきや手紙など合わせて18点。これらは2016年5月、福山大学の久保卓哉名誉教授が、中国の文学者で戦前、今の東京大学で講師を務めた方紀生の遺族が住む京都市内の居宅で見つけた。
このうち、谷崎潤一郎直筆の短歌は妻が箸でそうめんをすくいあげる夏の情景を詠んだもので、一緒に見つかったはがきから昭和16年ごろ、方紀生から土産をもらったお礼に贈られたとみられるという。また、林芙美子が昭和11年に中国を訪れた際、方紀生の手帳に書いた俳句は、林が前の年に発表した小説の一節がもとになっている。