私説 小倉百人一首 No.6 中納言家持

中納言家持
※大伴家持

かささぎの渡せる橋におく霜の
       白さを見れば夜ぞふけにける

【歌の背景】7月7日、七夕の夜、鵲(かささぎ)という鳥が翼を広げて天の川に橋を作り、牽牛・織女の両星を合わせるという伝説がある。寒い冬の夜に仰ぎ見る天の川の寒々とした光と、宮中御殿の階の上の真っ白な霜とが重なり合って、凍りつくような冬の深夜を感じさせる。

【歌意】鵲が天の川に渡すという橋に例えられる宮中の階。そこに降っている霜の真っ白いさまを見ていると、本当に夜も更けてしまったことだ。

【作者のプロフィル】大伴家持。父は旅人。日本古代を代表する名族の嫡流でありながら、奈良後期の大伴・藤原両氏の対立の中で政争に巻き込まれ不遇を繰り返した。それは、とりわけ天平勝宝8年(756)に左大臣橘諸兄が引退し、聖武天皇が崩御後、急速に権勢拡大した藤原氏に抗しきれず顕著になった。止めは早良親王の廃太子事件に巻き込まれたことで、持節征東将軍として陸奥の多賀城の政庁で没した後には、官位剥奪、遺骨の埋葬さえ許されぬ屈辱を受けている。官位は従三位中納言まで進んだ。
  万葉集の最後を飾る代表的歌人。万葉集が幅広い層から、また反政府的な歌を含めて様々な秀歌が収録されているのは、編纂者の家持の存在が大きかったようだ。

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