寂蓮法師
※父は醍醐の俊海阿闍梨。
むら雨の露もまだひぬまきの葉に
霧立ちのぼる秋のゆふぐれ
【歌の背景】上の句のむ・ま・まのM音の調べが特徴的。秋の夕暮れの情景が沁み込んでくるようだ。古典和歌の中で最もポピュラーで、分かりやすく覚えやすい歌。
【歌意】ひとしきり降った村雨の露も、まだ乾かずに濡れて光っているまきの葉に、霧が立ち昇っている秋の夕暮れは何と寂しいことか。
【作者のプロフィル】俗名は藤原定長。父は醍醐寺の俊海阿闍梨。保延5年(1139)生まれ、建仁2年(1202)入寂。伯父の藤原俊成の養子となり、従5位下・左中弁・中務少輔になったが、俊成に実子、定家が生まれたので出家した。「新古今和歌集」の代表的歌人。