良暹法師
さびしさに宿を立ち出でてながむれば
いづこもおなじ秋の夕暮れ
【歌の背景】秋の寂寥感を歌ったもので、秋の夕暮れを巧みに歌いつくした、次の三夕(さんせき)の歌の先駆けをなすと評価されている秀歌。
心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ
西行法師
見わたせば花ももみぢなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ
藤原定家
寂しさはその色しもなかりけり槇立つ山の秋の夕暮れ
寂蓮法師
【歌 意】ひとりで庵に閉じこもっていて寂しさのあまり気がふさぐので、外に出てあちこち眺めると、さすがに秋の夕暮れだ。どこも同じように寂しい。
【作者のプロフィル】父祖や生涯はよく分からない。父は祇園の別当で、母は藤原実方の家の女童という説もある。京都・大原の里に住んでいたようだ。平安後期、後冷泉期ころの歌僧。