大納言公任
※藤原公任
滝の音は絶えて久しくなりぬれど
名こそ流れてなほ聞こえけれ
【歌の背景】藤原公任が時の権力者、藤原道長の伴をして嵯峨遊山した折の歌。公任は平安中期の歌壇を支配し、その才能、力量が高く評価されたといわれているが、この歌の内容は平凡。
【歌 意】嵯峨上皇が営まれた嵯峨離宮の、かつては豊かな水量を落としとどろかせた大覚寺の滝はもう涸れてしまったが、その名声は幻の滝音となって今もなお世に鳴り響いている。ならばその名滝を称えるこの歌も名声を得て、後世に伝わってほしいものだ。
【作者のプロフィル】関白太政大臣頼忠の長男。四条大納言と呼ばれた。漢詩・和歌・音楽に優れ、能書家。多彩な人で、とくにその歌論書が有名。「新撰髄脳」、「和歌九品」、「北山抄」などがある。「和漢朗詠集」の撰者でもあった。貫之・定家とともに、「中古の三歌人」とまでいわれ、当時の歌壇の指導者であった。長久2年(1041)76歳で没。