『神皇正統記』の中世写本 福島県只見町で発見
福島県只見町教育委員会は5月12日、南北朝時代の歴史書『神皇正統記』を1587年(安土桃山時代)に書写した写本が町内で見つかったと発表した。同署の中世写本の発見は県内で初めて。県や町の文化財指定を受けることを検討している。
今回見つかった写本は①綴葉装(てつようそう)という、『源氏物語』など平安時代以降の文学書で用いられている、日本の伝統的な装丁②大部分の漢字に振り仮名が付けられている③音読みと訓読みの符号がある④歴史的なできごとを記したページに付箋がある-などが特徴。
本には上野国(群馬県)の寺で祐俊という僧侶が書写したことが記されている。この写本は江戸時代の医者だった同町黒谷の原田家にあった。
調査を担当した東洋大の久野俊彦講師は「中世末期の本の読まれ方が分かる貴重な資料。表紙や糸が装丁当時のままで破損がなく、文化財として重要だ」としている。また、国立歴史民俗博物館の小池淳一教授は「会津の中世文化を解明する手掛かりになる」と話している。
神皇正統記は公家の北畠親房が1339年に著した、天皇を中心に歴史をたどり、南朝の正統性を主張した歴史書。原本は現存せず、約20点の中世写本が伝えられ、国や自治体の文化財に指定されている。