曾根好忠
由良の門を渡る舟人梶を絶え
ゆくへも知らぬ恋のみちかな
【歌の背景】これからの行き着く先もわからぬ恋路にさまよっている自分の心。そんな心境を、梶の緒が切れて海上を漂う舟に託して歌ったもの。
【歌 意】あの波荒い由良の海峡を漕ぎ渡る舟人が、その舟の梶の緒が切れて波のまにまに漂っていくように、行く先もわからない恋のみちだ。
【作者のプロフィル】生没年とも不詳。10世紀後半、村上天皇から一条天皇ころまでの人と思われる。官位は六位、丹後掾だったことから、貴族たちから曾丹後掾、曾丹後、さらに曾丹とだんだんつづめて呼ばれたので、彼はそのうち「そた」と呼ばれるようになりはしないかと嘆いたという。歌風は題材・用語も自由・清新で豊富だった。ただ、自尊心ばかり強くて奇行も多かったので異端視されていた。