藤原興風
たれをかも知るひとにせむ高砂の
松もむかしの友ならなくに
【歌の背景】高砂の松を自分と同じように老いて孤独の身と見立て、彼となら友になれるかと訪ねてみたが、松は人間ではない。また昔からの知己でもない。一体誰を友とすればいいのだろうと、老年の寂しさを歌ったもの。
【歌 意】かつて親しく交わった友人たちはみんな死んで、私一人が老いて孤独に残っている。さてこれからは一体誰を自分の友としようか。あの高砂の松なら友になってくれるかと訪ねてみたが、もともと人間ではないし、昔からの知己でもない。今さら、それを友だちにするわけにもいかないのだ。
【作者のプロフィル】参議浜成の曾孫。正六位相模掾道成の子。院の藤太と号した。昌泰3年、相模掾になり、従五位下を授けられた。官位は低かったが、歌人として名を得た。管弦も巧みで、とくに琴をよくした。没年不明