柿本人麻呂
あしひきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜をひとりかも寝む
【歌の背景】枕詞と序を重ねていって「長い」という感じを表現、それを「ながながし夜」で受けて、いかにものろのろした時間の流れを感じさせる。これがまた、ひとり寝の不満を恨めしく訴えており、全体として内容にふさわしい表現となっている。
【歌意】山鳥の尾の、しだれ尾のように長い長い秋の夜を、恋しい人にも会えないで、たった一人で寝ることであろうか。
【作者のプロフィル】生没年、経歴とも不詳。持統・文武朝の宮廷歌人。後世、歌聖といわれた。柿本氏は和爾氏、小野氏の同族とされるが、人麻呂自身は五位以上に進んだ官歴がなく、都では大舎人、地方では四国や石見(島根県)に赴任したことが記録に残っている。