凡河内躬恒
※父祖は不明。
心あてに折らばや折らむ初霜の
置きまどはせるしら菊の花
【歌の背景】初霜が降りた晩秋の白菊の花を詠んだもの。正岡子規が『歌よみに与うる書』で酷評して以来、評価がた落ちの一首。
【歌 意】白菊を折ろうかと思うのだが、何とか見当をつけて折るほかない。思いがけず早い初霜が一面に降りて、その白さでどれが花だか霜だかわからなくなってしまった。
【作者のプロフィル】父祖は不明。家柄はよくなく、貧乏でもあったが、歌が上手だったので、寛平年間に甲斐少目となり醍醐天皇に召され、御所所に出仕し丹波権目、淡路権掾を経て、和泉大掾になり六位を授けられた。寛平・延喜の古今集時代に活躍したが、生没年ともわからない。「古今集」の撰者に加えられており、歌人としては他の撰者と同列にあったが、歌学者としては貫之に一歩譲っていた。