文屋康秀
吹くからに秋の草木をしをるれば
むべ山風をあらしといふらむ
【歌の背景】この歌の作者については、文屋朝康(文屋康秀の子)の作とする説もある。山風をあらしということに対して、草木がしおれてしまう、つまり草木をあらすから、あらしというのだろうという理屈をつけた歌。言葉の遊びとしての面白みだけのもの。
【歌 意】風が吹くとすぐに秋の草木がしおれて枯れるので、なるほど山の風を(続けて書けば)“嵐”という文字の読みの通り“あらし”というのであろう。
【作者のプロフィル】「姓氏録」には、文屋の姓は天武天皇の皇女二品長親王の後なりとある。貞観2年(860)に刑部中判事となり、後、三河掾になり、元慶元年に山城大掾、同9年に縫殿介となった。六歌仙の一人。